蔵めぐり ~結城探訪~
こんな機会でもなければ
結城という「まち」には行かなかっただろう。
そして漠然と、紬のまち、という印象しか
持てずにいたはずだ。
駅前から7~8分ほど、北に向かって歩いたあたりが
どうやらまちの中心部らしい。
古くからの建物が、いまだ現役で
そこここに立ち並んでいるのが見えた。
なるほど、この煙突は酒造所のものだ。
江戸時代から続いているという酒造所のひとつ、武勇酒造の蔵。
こんにちは~、と暖簾をくぐると
愛想の良いおにいさんが、いらっしゃいませ、と言いながら
飛んできた。
日本酒は父が好きだった。
一升瓶から徳利にお酒を移し替え
湯を沸かしたやかんの中に入れて
塩梅をはかる。
父好みの熱燗になったら
お猪口と共にお盆に乗せて、食卓に運ぶ。
どうぞ、とお酌をすると
父は目を細めて「うまいなぁ~」と言いながら
喜んで飲んでいたっけなぁ。
少し遠い日の記憶をたどっていたら
「あの、よろしければ試飲も出来ますよ」と勧められる。
私もお酒は嫌いではないので
辛口のものと、イチオシのしぼりたてをいただいてみた。
前者はスタンダードなものだけど、後者は実にさわやかな飲み口だった。
迷わずに、後者を1本買ってしまった。
・・・まだ、散策は始まったばかりだというのに。
そこの酒造店から、さらに数分、北上すると
もう1軒の結城酒造店にたどり着く。
こちらでは、酒蔵の入り口が店舗も兼ねている様で
実際に使っているという「地釜」を快く見せてくれた。
これでも小ぶりな方だという。
1度に、380キロほどの米が投入されるのだとか。
ワンカップをひとつ、買ってみた。また荷物が…。
4年前のあの震災では
やはり、それなりにダメージを受けたらしい。
さいたまだって、相当、揺れたもの。
シンボルの煙突は、崩れずに残ったそうだけど
代々、大切に受け継がれてきたものは
伝承される技術も含めて、途切れないでほしいと願ってしまう。
今やもう、こうした光景は
私が住む街では、目にすることはない。
日本家屋特有のぬくもりが、見ているだけで伝わってくる様だ。
何しろ、ウチの近隣は、ぐるりとマンションだらけだし
道を渡れば、ビルが建ち並ぶエリアだから
人の、生活の息吹がまるで感じられない。
そうそう!
つむぎ郷土館近くにある、この蔵元の醤油と酢は
絶品!!!だ。
試食の1滴で、その美味しさがふわぁ~っと口の中に広がり
母はどちらも一升瓶でのお買い上げ。
・・・って、持つのは私だけど。
(まぁ、日頃のダンベルは片手5キロずつだから
1.8ℓなら大丈夫だけどね)
一見、街中の喫茶店かしら・・・と思ったら
美容室に郵便局が同居していて
思わず、その組み合わせに、うふふ。
奈良の時代には、木綿(ゆう)の木の産地として知られた、この地。
鎌倉時代に築かれた城下町の礎と、その特有の風景が
今なお、生き続けている。。。
はたして、ウチからだったら
車の方が便利なのか
それとも鉄道を利用した方がいいのかしら…などと
名物、ゆでまんじゅうを頬張りながら
リピートする日のことを考えた。