台風一過で月が出て
朝の天候は、ひどいものだった。
雨粒たちが強い風のパワーを借りて
バンバンと吹き付け、木々の枝葉を大いに揺らし続けていた。
折角、育ったオリーブの枝が、たおやかにしなっていたけれど
柔軟性があるゆえに、大きなダメージを受けないのは
見ていて流石だな…と思う。
時期の花、秋桜も
薄い花びらにまともに強い雨を受けながら
それでも風に逆らうことなく、吹き付けるままに身を委ねている。
こんな日の、秋桜の濃いピンク色の花たちは
人一倍・・・あ、いや、花一倍、どことなく
私の目には哀れに見えてしまうから、不思議だ。
そっと花芽が開き、育ち始めたばかりの千日紅の花。
細い針のような雨を、顔を真っ直ぐあげて受けている。
プランターに植えた植物たちを並べているのは
ルーフバルコニーの上だから
あまりにも雨が沢山降ると、排水機能が追い付きやしない。
千日紅を植えている、その足元に小さな水溜りが出来たかと思えば
あっという間に、それらが連なり
ひとつの大きな水面となって、風が吹くたびに
水紋を作り上げていく。
止まない雨はない、とはいうけれど・・・
見上げた空に、低く雲が垂れ込めて
凄い速さで流れていく様をみていると
どこか、ゾッとするものを感じる。
ひとつ、風で押されて傾いただけで
大きな被害が出ることもなく、台風は通り過ぎて行った。
次第に青空が、雲の切れ間から顔をのぞかせ
とうとう、台風一過、特有の天気となった。
さっきまで、大揺れに揺らされていたオリーブの木も
それぞれの枝がしっかりと天をさして、真っ直ぐに伸びている。
1本も折れなくて、よかった。。。
リビングの窓からは、富士山が見え始め
手前に連なる山々の稜線までもがはっきりと
肉眼でとらえられるなんて、そうそう滅多にあることではない。
やっぱり、台風の勢力って凄いんだねぇ、なんて
思わず、声に出して言ってしまい
母に大笑いされてしまった。
散々、もてあそばれた千日紅たちも
夕陽を浴びる頃にはもう、すっかり元気になっていた。