初冬の侘び寺
ウチのエリア、周囲はみっちりマンションやビルが建ち並び
近くにある交差点は、朝夕の交通情報で
必ずその名称が語られるほどの渋滞のメッカ。
50メートルおきに信号があり
5キロ移動するのに20分はかかる。
可哀想に、そんなわけでウチの愛車は
燃費の良さを語るコンパクトカーとはいえ
リッター9キロほどしか走れない。
だから、こんな道路を走ったら
車にとっても本当はいいのだろうな、と
ついつい思ってしまう。
主な移動手段も鉄道なので
たまに生活圏外のエリアを陸路で移動すると
あの道路がココに繋がっているのか~と
ビックリすることがある。
車窓からの光景もまた
ある意味、鉄道のそれとは違って新鮮に感じる。
すっかり刈り入れの終わった田んぼには
健気にも、刈り取ったところから
新芽が生え出でて来ているのか、やわらかな緑が並んでいる。
車って、便利だな~なんて思いつつ
遠出には縁のない日常ゆえに
迫ってくる山々さえも、珍しい。
おや、牧場でもあるのだろうか。
干し草たちが積み上げられ
間もなくやって来る冬への備えがなされている様だ。
既に落葉した樹木の枝が
午後遅くの空に伸びていて
日没の時間が近いことを告げている様に見える。
途中、何やら由緒がありそうな
ひとつの古寺に立ち寄った。
見事なかやぶき屋根の庫裡。
父の実家も、こんな感じだったな…と
ふっと思い出す。
苔生した屋根を頂く総門。
国の重要文化財にも指定されているそうで
聞けば相当な年代ものらしい。
もう少し、時期が早ければ
紅葉が鮮やかだったのかもしれないな、と思いつつ
まずは正面に回り込んで見る。
折角なので、脇の入口から踏み石を渡り
そっと中に入ってみた。
地面には、落葉とぎんなんの実が
敷き詰められたように落ちていて
そこはかとなく、独特の香りを放っていた。
なるほど、葉の先が割れている葉が見てとれたので
この木は雌か・・・と識別することが可能だった。
こちらが山門。
総門同様、国の重文指定のもの。
その奥には、これまた国重文の如来堂。
1701年の建築と言われているそうで
歴史オンチの私には、ただ古い・・・というイメージしかないけれど
価値があるのだろうな。
鐘楼堂にある鐘は、300年ほど前に寄進されたものらしい。
建物の柱などに施されている彫刻を見ているだけでも
何だか気が遠くなりそうな…。
左の建物が涅槃堂とやらで
中には県の重要文化財指定の
釈迦涅槃像が安置されている。
ちょうど、夕刻の勤行の時間だったらしく
僧侶の読経が聞こえて来た。
門前には、樹齢800年とも言われる
県の天然記念物に指定されている大きな欅が2本。
その時代から現代まで
雄大な時の流れを見守って来たのであろう。
そして季節は幾度も巡り
この木々の枝から舞い降りた数多くの木の葉たちが
今、踏みしめているこの大地に積み重なり
見えないところでもしっかりと
「歴史」を積み重ねているのかもしれない、と
思ってしまった。
【撮影地:栃木県専修寺】
さ、陽が落ちる前に大きな道路に戻ろう。
道の駅にも、寄って行こう♪