風のつばさ

思いのままに吹く風に乗って、今日はどこに飛んで行こう♪

たまには、ちょっと、少しだけ

友人と一緒に、銀座に繰り出した。
 
かつての馴染みの場所も
既にひとつひとつが思い出の地。
 
老舗店舗の名を見ては
変わらぬ本物がそこにあり続ける安心感を覚え
それでも対極化した一面を光景の中に見つけ
時の流れに、ふぅ~っとため息をついてみる。
 
食前に1杯、と、パブで口にしたカクテル
予約の入ったホテルラウンジでのディナー
あるいは、名の通ったフレンチレストランでのコース料理…。
 
少し、街を歩き、もう1杯、と立ち寄った
その店はもはや名を知ることもなかったけれど
そうしたかつてを懐かしむように
今の時も、やがては思い出す時が来るのだろうか。
 
帰り際、帝国ホテルにちょこっと足をのばしてみた。
ショップに立ち寄り
迷いなく、ホテルの名が印刷されたちいさな黒い包みをひとつ
手に取ってレジに並ぶ。
 
「いらっしゃいませ。贈り物でございましょうか」
そう言って、品のいい黒いスーツに身を包んだ男性と
可愛らしい制服姿の女性が、並んで頭を下げる。
 
母へのお土産のつもりで買ったので
本来は「自宅用」なのだけど
たまには、少しだけ贅沢気分を味わってもらうのも
悪くはないだろう、と思い
「はい」と、こたえてみた。
 
流石に一流の品格を感じさせる
少しばかりお洒落な紙袋に商品を入れ
「ありがとうございます」と手渡してくれる。
 
 
以前、本館に続くアネックスには
よくお茶に連れて来てもらった。
その人は、マイセンのカップでいただくミルクティと
クラブハウスのサンドイッチが好きだった。
 
仕立てのいい服をいっぱい持っていて
「サイズが合わなくなったから」と
私も沢山、いただいた。
 
当時はブランド品が並ぶ店舗を眺めては
随分、高価なものばかりだな、と思っていたけれど
あの頃、いただいたフェラガモのキーケースは
今もなお、飽きずに使い続けているし
本物が持つ丈夫さと価値には、改めて驚いてしまう。
 
 
仕事を辞めて、生活は一変した。
 
アネックスでいただいたミルクティ1杯の値段を知り
1人前のクラブハウスサンドの値段を知り
フェラガモのキーケースの価格を知った。
 
今は、あえてそれらを欲せずとも
十分に日常は回るけれど
それでも、たまには、少しだけ
味わいたいものがある。
 
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「あらまぁ、お土産~。わざわざ、ありがとう。
帝国ホテルのチョコレートなんて、高いのに…」と言いつつ
 
「じゃあ、紅茶を淹れましょう」とお湯を沸かし始めた母を見て
500円+税 の贅沢、たまにはよかろう~と思う私であった。