鶴丸×北の大地 【新千歳空港】
今から思えば、何とも贅沢…と思うけれど
当時の公立高校の修学旅行先が京都・広島エリアが主流だった頃
私が通っていた学校は
1年おきに、九州、もしくは北海道が、その行先だった。
1期上の学年が九州だったので
私たちは自ずと北の大地に行くことになり
今はもうどちらの路線も過去のものとなったけれど
往路は上野から青森までブルートレイン
そして、青函連絡船に乗り継いで函館に上陸。
時間をたっぷりかけて移動した割には
復路は新千歳から羽田まで、たった1時間半で着いてしまい
鉄・船・空と、その輸送力の相違を体験したことが
30年前の私にとって、一番記憶に残るものとなった。
そして、その余韻が今の「空」好きにも
繋がっているのかもしれない、と
懐かしき新千歳に降り立ち、鶴丸のロゴを眺めながら
当時の記憶を辿りたくなった。
深まった秋の空に向かって
テイクオフ!
B737は小さめの飛行機とはいえ、約150席を有する機体。
それなりに主用路線を結ぶ役割を担っている様だ。
機体番号:JA322J B737-800
前輪が上がり
続いて後輪もゆるりと地面から離れ
エンジンから噴出される熱風が、機体の辿った道を揺らす。
少し大き目のウィングレットを装着し、離陸する姿は
いつ見ても逞しさを感じてしまう。
上がって程なく、車輪収納。
B737の後輪は、パズルのようにぴたりと機体下部に収納されるので
それを下から見上げるのも、また楽しい。
右に捻りながら、どんどん上昇し
そして、くるりと向きを変え
一路、機体は南へ飛んで行く。
ここが北の大地である所以を、そこにも見出すことが出来る。
続いて、もう1機。同じくB737-800
機体番号:JA349J
同機種とはいえ、こちらの上がりは、早かった。
満席ではないということが
上がりの位置から見ても、容易に判断が出来る。
ちょうど夕方の陽射しが
雲の切れ間から射し込んで来て
捻る白い機体を、オレンジ色に染めて行く。
流石にもう、ターミナル前のエプロンには陽が当たらなくなり
薄らと寒さを感じる風が展望デッキに吹く頃
今度は375席を有する機体が、滑走路に向かってタキシングして行った。
機体番号:JA8985 B777-200
この機体が飛び立ち、旋回しながら飛んで行く空は
もはや夕景の色が濃いだろうけれど
機体が見えなくなるまで、追ってみようと思った。
一応は、大型機と言われているゆえに
十分な滑走距離を取り、ゆるりと機体が上がっていく。
前輪が地面から離れ
そして、エアボーン!
もはや他に誰も居なくなったデッキで
ひたすらカメラを機体に向ける。
力強い翔け上がりが目の前で展開されているのだから
やはり、見なければ、どこか勿体ない気がして。
上昇しても、まだギアは出っ放し~。
それでも、だからこそ、この1枚が離陸直後の光景であることが
証明出来るのだな、と思った。
捻りながら、どんどん上昇して行く鶴丸。
飛行機は、どのアングルからとらえても
それぞれの魅力があるのを感じる。
右に大きく旋回し
更に更に翔け上がっていく。
尾翼の、赤い鶴丸のどこか誇らしげな姿を見て
初めて飛行機に乗ったあの日のことを
私も遠い記憶から、そっと引っ張り出したくなった。
10日も旅した北海道の各所より
空港の記憶、飛行機の記憶、鶴丸の記憶の方が
私にとって深く印象に残っているのは、どうしてなのだろう、と。
そしてまた、私はきっとここに来るだろう、と
目を細めつつ、飛び行く機体の軌跡を追っていたら
展望デッキ閉鎖の時間がやってきて、これにて撮り止め。
そういえば、私たちも午後5時頃に
新千歳を発ったんだっけ、とそんな記憶は鮮明に覚えているのだから
全く、我ながら可笑しくなってしまった。